三重県における製造産業の構造的変革と企業要覧:金属・機械・プラスチック加工業の包括的研究報告書



USB巨大エンターキースイッチ(他のボタンに割り当て可能)

目次

1. 序論:三重県産業の地政学的優位性と製造業のエコシステム

日本の中部圏と関西圏の結節点に位置する三重県は、伊勢湾岸に広がる巨大な工業地帯を背景に、極めて高度な産業集積を形成している。

本報告書は、三重県内に拠点を置く金属加工、機械製造、プラスチック加工の主要企業について、その技術的特性、事業戦略、および将来展望を包括的に分析したものである。

提供された調査資料に基づき、各企業の詳細な概要に加え、所在地、連絡先、ウェブサイト情報を網羅し、ユーザーの要求に応える実用的なデータベースとしての機能を果たすとともに、産業構造の深層に迫る洞察を提供する。

三重県の製造業は、単なる「モノづくり」の集積地ではない。

それは、四日市の石油化学コンビナート、鈴鹿・亀山の自動車産業クラスター、そして北勢地域の精密機械加工群が有機的に結合した、高度な産業エコシステムである。

特に近年では、従来の大量生産型モデルから、多品種少量生産、さらには「グローバル・ニッチ・トップ(GNT)」戦略への転換が顕著に見られる。

本報告では、県内の産業構造を「北勢(金属・機械)」、「中勢・南勢(ハイブリッド・プラスチック)」、「伊賀(精密・専用機)」という地域特性、あるいは加工技術の系統に基づいて分類し、個々の企業がいかにして独自の技術的地位を確立しているかを詳述する。


2. 北勢地域の産業クラスター:自動車産業を支える金属・機械加工の心臓部

桑名市、いなべ市、四日市市を中心とする北勢地域は、中京工業地帯の一角を占め、自動車部品および工作機械のサプライチェーンにおいて極めて重要な役割を果たしている。

ここでは、鋳造(いもの)という伝統産業から進化したハイテク金属加工企業群が、世界レベルの品質を支えている。

2.1 株式会社伊藤製作所(Ito Seisakusho Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

株式会社伊藤製作所は、戦後の復興期に漁網機械の部品製造からスタートし、現在では「順送り金型」の設計製作において世界的な名声を博している企業である。

同社の特筆すべき点は、単なる金型メーカーの枠を超え、試作開発から量産加工までをワンストップで提供する「提案型企業」へと脱皮している点にある。

特に自動車、電子機器、産業機械分野における部品加工では、ミクロン単位の精度が要求される。

同社は、製品の設計段階から顧客と協働し、量産時の歩留まりやコストダウンを見据えた金型設計を提案することで、サプライチェーン上流での付加価値を最大化している。

四日市市内に本社工場に加え、金型工場、および複数のプレス加工工場を展開しており、その生産能力は地域屈指である。

グローバル展開においても先見性を持っており、1990年代後半にはフィリピンへ進出するなど、早くから海外生産体制の構築に着手してきた。

これは、国内の空洞化を単に恐れるのではなく、最適地生産を追求する戦略的経営の表れである。

【技術的特異性:順送り金型技術】

同社の中核技術である「順送り金型(Progressive Die)」は、一つの金型の中で複数の加工工程(抜き、曲げ、絞り等)を連結させ、コイル材を連続的に送りながら加工を行う技術である。

これにより、複雑な形状の部品を高速かつ大量に生産することが可能となる。伊藤製作所はこの分野において、長年培ったノウハウと最新のCAD/CAMシステムを融合させ、難易度の高い加工を実現している。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社伊藤製作所
本社所在地〒512-8061 三重県四日市市広永町101番地
電話番号059-364-7111
ウェブサイトhttps://www.itoseisakusho.co.jp/
主要事業順送り金型設計製作、プレス部品加工、部品組立
代表者代表取締役社長 伊藤 澄夫
資本金5,000万円
従業員数136名(2025年4月現在)

2.2 三重精機株式会社(Mie Seiki Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

三重精機株式会社は、桑名市を拠点に80年以上の歴史を誇る精密部品メーカーである。

同社の強みは、圧倒的な設備力にある。300台を超えるNC自動旋盤を保有し、自動車の「走る・曲がる・止まる」を司る重要保安部品(ABS、EPS部品等)の超大量生産を実現している。

同社の戦略において特筆すべきは、「切削加工」をコアとしつつも、そこにとどまらない「工程の垂直統合」である。

切削だけでなく、研削、樹脂溶着、そして小組立(ASSY)までを社内で完結させる体制を構築している。

これにより、顧客であるティア1メーカーに対して、単なる部品ではなく「機能ユニット」としての納入を可能にし、サプライチェーン内での代替不可能な地位を築いている。

また、同社はIoTやDX(デジタルトランスフォーメーション)への投資にも積極的であり、2015年にはIoT加工サポートシステムの実験を開始するなど、次世代のスマートファクトリー化を推進している。

【技術的特異性:ミクロン精度の量産技術】

一般に、試作レベルで高精度を出すことと、月産数百万個レベルでその精度を維持することは全く別の次元の課題である。

三重精機は、1/1000mm単位の精度が求められる部品を、24時間稼働の量産ラインで安定供給する品質管理能力を有している。

これは、最新鋭の検査機器の導入と、長年の経験に基づく切削条件の最適化によって支えられている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名三重精機株式会社
本社所在地〒511-0825 三重県桑名市上野970番地
電話番号0594-22-0856
ウェブサイトhttp://www.mie-seiki.co.jp
主要事業精密金属部品の切削・研削加工、二次加工、樹脂溶着、プレスASSY
代表者代表取締役社長 髙橋 宏和
資本金2,000万円
従業員数362名(2025年11月現在)

2.3 株式会社青山製作所(桑名)(Aoyama Seisakusho Co., Ltd. – Kuwana)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

※注:愛知県に本社を置く同名の自動車ファスナー大手とは異なる、桑名市の地域密着型企業である。

桑名の株式会社青山製作所は、製造業の枠組みを超えたユニークな「多角経営」を展開している企業である。

1938年の創業以来、繊維機械やスクーター部品の製造で培った技術を基盤に、現在では工作機械やシールド掘削機(トンネルを掘る巨大機械)の部品製造を行っている。

同社の最大の特徴は、製造部門とサービス部門のシナジーにある。

製造部門では、材料手配から製缶、溶接、5軸加工機による高精度加工、塗装、組立までを一貫して行う能力を持つ。

これに加え、サービス部門では工作機械の修理・移設・改造を請け負い、さらに人材派遣部門が製造現場への人的リソース供給を行う。

つまり、「機械を作る」「機械を直す」「機械を動かす人を送る」という、製造現場に必要なリソースを全方位から提供するビジネスモデルを確立しているのである。

【技術的特異性:大物部品の一貫加工】

シールド掘削機や大型工作機械の部品は、その巨大さゆえに加工の取り回しが難しく、高い溶接技術と大型の加工設備が必要となる。

同社は、製缶(鉄板を切断・曲げ・溶接して形状を作る工程)から機械加工までを社内で行えるため、大型構造物であっても高い寸法精度を保証できる強みを持つ。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社青山製作所(桑名)
本社所在地〒511-0806 三重県桑名市大字東汰上1010-1
電話番号0594-22-5531
ウェブサイトhttp://www.kkaoyama.co.jp
主要事業工作機械・掘削機部品製造、機械修理・移設、人材派遣・請負
代表者代表取締役 青山 啓一
創業1938年9月

2.4 桑原鋳工株式会社(Kuwahara Chuko Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

「くわな鋳物」は日本の鋳造産業の象徴の一つであるが、産業構造の変化とともに多くの鋳物工場が姿を消した。

その中で桑原鋳工株式会社は、伝統技術と革新的技術のハイブリッド戦略によって力強く発展している企業である。

同社の事業の柱は二つある。一つは、下水道用マンホール蓋や自動車用試作部品などの産業用鋳物である。

ここでは「消失模型鋳造法(フルモールド鋳造法)」を採用し、発泡スチロールで模型を作ることで、木型等の高価な金型を作らずに複雑な形状の鋳物を短納期で製作することを可能にしている。

もう一つは、自社ブランドによる消費者向け製品の展開である。「鉄急須 霰(あられ)」に代表される鋳鉄製調理器具や日用品を開発し、米国や欧州への輸出も行っている。

これは、B2B(企業間取引)に依存しがちな部品メーカーが、B2C(消費者向け取引)市場を開拓し、自社のブランド価値を高める稀有な成功事例である。

【技術的特異性:フルモールド鋳造法】

通常の鋳造では、砂型を作るための「木型」や「金型」が必要となり、これには多額の費用と期間がかかる。

桑原鋳工が得意とするフルモールド法は、発泡スチロールを削り出して模型とし、それを砂に埋めてそのまま溶湯(溶けた鉄)を注ぎ込む。

発泡スチロールは熱で瞬時に気化・消失し、その空間に鉄が満たされて製品となる。

この技術により、試作品や一品物の製造コストとリードタイムを劇的に圧縮している。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名桑原鋳工株式会社
本社所在地〒511-0806 三重県桑名市東汰上518番地
電話番号0594-21-2141
ウェブサイトhttps://www.kuwaharacc.net/
主要事業銑鉄鋳物(マンホール、自動車部品)、自社ブランド鉄器製造
代表者代表取締役 桑原 健造
資本金1,000万円
従業員数24名

2.5 三重ダイキャスト工業株式会社(Mie Die Casting Industry Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

いなべ市に位置する三重ダイキャスト工業株式会社は、アルミニウムダイカスト製品のスペシャリストである。

同社の最大の競争力は、鋳造から後工程までの「ワンストップ生産体制」にある。

通常、ダイカスト(鋳造)、バリ取り、機械加工、表面処理、塗装といった工程は別々の会社に発注されることが多いが、同社はこれらを一括して管理・請け負う体制を構築している。

これにより、顧客は発注管理の手間を大幅に削減でき、かつトータルでの品質保証を受けることができる。

FA(ファクトリーオートメーション)機器のブラケット、カバー、ヒートシンク(放熱板)などを主力製品としており、複雑な形状や高い放熱性が求められる部品製造において高い信頼を得ている。

国家資格であるダイカスト技能士を中心とした技術者集団が、高品質なモノづくりを支えている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名三重ダイキャスト工業株式会社
本社所在地〒511-0202 三重県いなべ市員弁町楚原750-1
電話番号0594-74-2411
ウェブサイトhttp://www.mie-dc.biz/
主要事業アルミニウムダイカスト製造、機械加工、表面処理
代表者不明(資料に記載なし、公式サイト参照推奨)
資本金1,000万円
従業員数55名

2.6 カネソウ株式会社(Kaneso Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

カネソウ株式会社は、名古屋証券取引所メイン市場に上場する、建築・都市景観用金属製品のリーディングカンパニーである。

大正11年(1922年)の創業以来、100年以上にわたりインフラ整備を支え続けてきた。

同社の製品群は、マンホールカバー、グレーチング(溝蓋)、ルーフドレン(屋上排水金物)、車止めなど、都市のあらゆる場所で使用されている。

近年では、防災・減災ニーズの高まりを受け、地震に強い免震構造対応のエキスパンションジョイント(建物の継ぎ目)カバーなどの開発に注力している。

自社内に振動台試験装置を有し、実際の地震波を再現して製品の安全性を検証するなど、徹底した品質追求(社是:王道に順う)を行っている点が特徴である。

鋳鉄、ステンレス、アルミニウムといった多様な素材を使いこなし、景観に調和するデザイン性と、過酷な環境に耐える機能性を両立させる開発力は、業界内で高く評価されている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名カネソウ株式会社
本社所在地〒510-8101 三重県三重郡朝日町大字縄生81番地
電話番号059-377-4747
ウェブサイトhttps://www.kaneso.co.jp/
主要事業建築・防災・都市景観整備・環境・福祉関連製品の製造販売
代表者代表取締役社長 豊田 悟志
資本金18億2,000万円
従業員数267名(令和4年4月時点)

2.7 朝明精工株式会社(Asake Seiko Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

朝明精工株式会社は、量産部品製造と専用機械開発という二つの顔を持つ企業である。

第一の柱は、自動車の駆動系に不可欠な「等速ジョイント(CVJ)」部品の製造である。

大手ベアリングメーカーのティア1サプライヤーとして、月産数百万個単位の部品を供給している。

第二の柱は、FA(ファクトリーオートメーション)設備の設計製作である。自社が量産工場であるという強みを活かし、「使う側の視点」に立った自動化設備や検査機を開発し、外販している。

顧客の「やりたいこと」をヒアリングし、ゼロから構想・設計・製造・据付までを行うオーダーメイド対応力が強みである。

グローバル展開も進んでおり、インドネシアにエンジニアリング拠点を持ち、日系企業の海外工場への設備納入やメンテナンスもサポートしている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名朝明精工株式会社
本社所在地〒510-8122 三重県三重郡川越町大字豊田1042-3
電話番号059-363-2263
ウェブサイトhttps://www.asake-seiko.co.jp/
主要事業自動車用等速ジョイント部品製造、FA専用機械・設備の設計製作
代表者代表取締役 廣田 吉泰
資本金4,800万円
従業員数230名(2024年8月現在)

3. 中勢・南勢地域の産業クラスター:素材技術とハイブリッド加工の融合

津市から松阪市にかけての中勢・南勢エリアは、北勢の自動車産業とは少し色合いを異にし、素材科学(プラスチック、ゴム、化学)と加工技術を融合させた高付加価値製品を持つ企業が点在している。

3.1 株式会社三ツ知製作所(Mitsuchi Corporation)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

本社は愛知県春日井市にあるが、マザー工場としての機能を持つ主力拠点は松阪市(旧飯南町)に位置する。株式会社三ツ知製作所は、「冷間鍛造(れいかんたんぞう)」技術のスペシャリストである。

自動車のシート、エンジン、ブレーキ、エアバッグなどに使用される締結部品(ファスナー)や機能部品を製造している。

同社の掲げる「100億宣言」では、2035年までに売上高100億円を目指し、水素ステーション用コネクタや航空宇宙部品といった新分野への進出を加速させている。

松阪工場ではスマートファクトリー化を推進し、AIや3Dプリンターなどの先端技術を取り入れた生産革新に取り組んでいる1

【技術的特異性:冷間鍛造技術】

冷間鍛造とは、金属を加熱せずに常温のまま金型で強い圧力をかけて変形させる技術である。

切削加工(削り出し)と比較して、材料のロス(削りカス)が出ず、加工時間が圧倒的に短いというメリットがある。

さらに、金属組織が緻密になり硬度が増す「加工硬化」という現象により、強度に優れた部品を作ることができる。

三ツ知製作所はこの技術により、従来の切削品に比べて材料ロスを50%削減、生産性を約10倍向上させている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社三ツ知製作所
三重事業所〒515-1412 三重県松阪市飯南町向粥見159番地の3
電話番号(要確認:本社代表 0568-31-8051 等を参照)
ウェブサイトhttps://www.mitsuchi.co.jp/
主要事業自動車用冷間鍛造部品(シート、エアバッグ関連等)の製造
代表者代表取締役 遠藤 信幸
資本金1,000万円

3.2 株式会社光機械製作所(Hikari Kikai Seisakusho Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

津市に本社を置く株式会社光機械製作所は、工作機械と切削工具の両方を手掛ける技術志向の企業である。

創業以来の理念「Be Professional!」のもと、ダイヤモンド工具を研削するための専用工作機械や、超硬ドリルなどの切削工具を製造している。

同社の最新の取り組みとして注目されるのが、レーザー加工技術への注力である。つくば市や柏市に研究拠点を設け、超短パルスレーザーを用いた微細加工技術を開発。

これを搭載した専用レーザー加工機の製造や、受託加工サービスを展開している。

従来の刃物では加工が困難な新素材や、微細な形状加工が求められる半導体・医療分野へのソリューション提供を行っている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社光機械製作所
本社所在地〒514-0112 三重県津市一身田中野8番の1
電話番号059-227-5511
ウェブサイトhttps://www.hikarikikai.co.jp/
主要事業専用工作機械(研削盤)、レーザー加工機、切削工具の製造
代表者代表取締役社長 西岡 慶子
資本金4,000万円
従業員数108名

3.3 旭電器工業株式会社(Asahi Denki Kogyo Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

旭電器工業株式会社は、パナソニックグループの有力パートナーとして、配線器具や電子部品を製造するメーカーである。

津市の本社と志摩工場を有し、企画・設計から金型製作、成形、組立までの一貫生産体制を敷いている。

特に住宅用配線器具(スイッチやコンセントの内部機構など)においては国内市場で圧倒的なシェアを持つ製品も存在する。

また、自動車分野への進出も著しく、セキュリティアラームやEV(電気自動車)充電用ケーブルなどの車載機器を製造しており、自動車産業向けの品質マネジメント規格であるIATF16949認証を取得している。

これにより、家電・住宅設備から自動車まで幅広い分野で高品質な製品を供給できる体制を整えている。

【技術的特異性:原着成形技術】

同社が得意とする「原着成形」とは、プラスチック材料にあらかじめ顔料を混ぜて着色し、成形する技術である。

これにより、成形後の「塗装」工程を省略できるため、コスト削減と環境負荷低減(VOC排出削減)を同時に実現する。

塗装レスでありながら、ピアノブラックのような深みのある光沢や質感を実現する技術力は、外観品質に厳しい自動車内装部品などで高く評価されている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名旭電器工業株式会社
本社所在地〒514-0101 三重県津市白塚町2856番地
電話番号059-233-2000
ウェブサイトhttp://www.asahidenki.biz/
主要事業配線器具、車載用機器、制御機器等の企画・設計・製造
代表者代表取締役 橋本 幸一郎
資本金8,000万円
従業員数717名(2024年1月時点)

3.4 三重化学工業株式会社(Mie Chemical Industry Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

松阪市に拠点を置く三重化学工業は、化学と繊維の技術を組み合わせたユニークな製品群を持つ企業である。

創業時は洗剤メーカーであったが、現在は「保冷剤・保冷具」と「作業用手袋」の二大柱で事業を展開している。

特に保冷剤技術を応用した医療機器分野への進出が目覚ましい。アイシングパックや温湿布用の蓄熱剤など、医療現場で使用される温度管理製品の製造販売許可を取得している。

また、作業用手袋分野では、竹由来の繊維を使用した「竹糸(たけいと)くん」シリーズなど、環境配慮型や機能性の高い独自商品を開発している。

外部機関との共創(コ・クリエーション)を推進する「ミエラボ」を創設するなど、オープンイノベーションにも積極的である。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名三重化学工業株式会社
本社所在地〒515-0001 三重県松阪市大口町255-1
電話番号0598-51-2361
ウェブサイトhttp://www.miekagaku.co.jp/
主要事業作業用手袋、保冷剤・保温具、医療機器の製造
代表者代表取締役 山川 大輔
資本金2,300万円
従業員数60名

3.5 株式会社オクムラ(Okumura Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

株式会社オクムラは、松阪市を拠点に「チューブ・ホース」の製造に特化した企業である。

1973年の創業以来、自動車用燃料ホースやウォーターホースの製造で技術を磨いてきた。

近年ではその押出成形技術を活かし、医療分野へ本格参入している。

ISO 13485(医療機器品質マネジメントシステム)を取得し、クリーンルーム内での医療用カテーテルチューブや多層チューブの製造を行っている。

自動車用ホースで培った耐久性や耐薬品性の技術と、医療用の精密性を融合させ、「総合パイプオンリーワンメーカー」を目指している。

金属やゴム製品の樹脂化(プラスチック化)提案も得意としており、軽量化ニーズに応えている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社オクムラ
本社所在地〒515-0841 三重県松阪市曲町638-1
電話番号0598-XX-XXXX (公式サイト等で確認推奨、記載なし)
ウェブサイトhttps://www.okumura.co.jp/
主要事業自動車用樹脂ホース、産業用・医療用樹脂チューブの製造
代表者代表取締役社長 奥村 公人
資本金8,000万円
従業員数250名

3.6 岩崎工業株式会社(Iwasaki Industry Inc.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

「ラストロウェア(Lustro Ware)」ブランドで知られるプラスチック家庭日用品の大手メーカーである。

本社は奈良県にあるが、主要生産拠点である「三重プラント」が松阪市に所在する。

食品保存容器、ゴミ箱、冷水筒など、スーパーやホームセンターで見かける多くのプラスチック製品をここで製造している。

三重プラントでは環境対策が進んでおり、オンサイトPPA(電力販売契約)による太陽光発電設備を導入し、製造工程でのCO2排出削減に取り組んでいる。

また、オムロンヘルスケア株式会社(松阪市に拠点あり)と連携し、医療機器部品の供給を行うなど、地域内でのサプライチェーン連携も強化している。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名岩崎工業株式会社
三重プラント〒515-0053 三重県松阪市広陽町10番地
電話番号0598-29-1811(三重プラント代表)
ウェブサイトhttps://www.lustro-global.com/
主要事業プラスチック日用品、医療機器部品の製造
従業員数120名

4. 伊賀地域およびその他の特色ある企業:専用機とグローバルニッチ

伊賀地域は関西圏へのアクセスが良く、独自技術を持つ機械メーカーや、特定の分野で世界シェアを持つニッチトップ企業が存在する。

4.1 ナベル株式会社(Nabell Corporation)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

伊賀市に本社を置くナベル株式会社は、工作機械や医療機器の可動部を保護する「ジャバラ(ベローズ)」の専門メーカーである。

1970年代にカメラの蛇腹製造からスタートし、その折り加工技術を産業用に転用することで、「機能的なカバー」としてのジャバラ市場を開拓した2。

現在では工作機械用カバーで高いシェアを誇るほか、その伸縮技術を応用した携帯型ソーラーパネル「Bella-Solar」などの防災製品も開発している。

米国、中国、韓国、台湾に拠点を持ち、グローバルに事業を展開する「グローバル・ニッチ・トップ」企業の代表格である。

2024年には「三重のサステナブル経営アワード」を受賞するなど、経営品質の高さも評価されている。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名ナベル株式会社
本社所在地〒518-0131 三重県伊賀市ゆめが丘2丁目2-3
電話番号0595-21-5060
ウェブサイトhttps://www.bellows.co.jp/
主要事業ジャバラ(工作機械用カバー等)、ソーラーパネル等の開発製造
代表者代表取締役社長 永井 規夫
資本金5,000万円

4.2 株式会社紀和マシナリー(Kiwa Machinery Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

名張市に拠点を置く株式会社紀和マシナリーは、1869年創業という長い歴史を持つ工作機械メーカーである。「マシニングセンタ」と呼ばれる、金属を自動で削り出す工作機械を主力としている。

同社の特徴は、カタログモデルだけでなく、顧客の要望に合わせたカスタマイズ機や専用機を開発できる柔軟性にある。

特に、長いワーク(加工対象物)を加工できるコラムトラバース型や、特殊な治具に対応した機械など、大手メーカーが手がけないニッチな領域で強みを発揮している。

海外売上比率が50%を超えており、米国、中国、タイなどに拠点を展開するグローバル企業でもある。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社紀和マシナリー
本社所在地〒518-0752 三重県名張市蔵持町原出522-51
電話番号0595-64-4758
ウェブサイトhttps://www.kiwa-mc.co.jp/
主要事業工作機械(マシニングセンタ)の製造販売
従業員数82名

4.3 株式会社サイトウ工研(Saito Koken Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

四日市市に位置する株式会社サイトウ工研は、FA(ファクトリーオートメーション)システムのインテグレーターである。

同社の歴史的ルーツは、世界遺産である富岡製糸場の「配繭装置(はいけんそうち)」の開発にあり、自動化技術において長い伝統を持つ。

現在は、住宅建材メーカーや自動車部品メーカー向けに、搬送コンベア、移載ロボット、専用組立機などをオーダーメイドで設計・製作している。

1,500平方メートルの広大な組立工場と大型クレーンを有しており、ライン一式を社内で仮組みし、試運転を行ってから納品できる「ターンキー」対応能力が強みである。

これにより、顧客は現地での立ち上げトラブルを最小限に抑えることができる。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社サイトウ工研
本社所在地〒512-1113 三重県四日市市鹿間町1100
電話番号059-328-1818
ウェブサイトhttps://saito-koken.co.jp/
主要事業各種産業用省力機械・自動化設備の設計製作
代表者代表取締役社長 斉藤 修

4.4 株式会社アガタ製作所(Agata Seisakusho Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

四日市市の株式会社アガタ製作所は、搬送システム(コンベア)のスペシャリストである。

食品工場向けのフリーザー搬送ラインや、次世代自動車工場向けのAGV(無人搬送車)/AMR(自律走行搬送ロボット)の製作を手掛けている。

設計から製缶(板金溶接)、組立、据付工事までを一貫して行うことができ、大手物流機器メーカー(マキテックなど)のパートナーとして、工場の「動線」を作り出している。

最新のファイバーレーザー加工機やタレパン(タレットパンチプレス)を導入しており、精密な板金加工部品の供給能力も高い。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社アガタ製作所
本社所在地〒512-1201 三重県四日市市上海老町750番地
電話番号059-326-0646
ウェブサイトhttps://www.agatass.com/
主要事業各種コンベヤシステム、省力化機械の設計製作
代表者代表取締役 市川 将也

4.5 河村産業株式会社(Kawamura Sangyo Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

四日市市の河村産業株式会社は、エレクトロニクス材料加工の隠れた巨人である。EV(電気自動車)のモーターやスマートフォンなどの電子機器に使用される「絶縁フィルム」や「高機能樹脂」の精密スリット加工(細く切る加工)において、業界トップクラスの技術を持つ。

単に切るだけでなく、プラズマ表面処理技術を用いてフィルムの接着性や親水性を改質する技術も保有しており、次世代の複合材料開発に貢献している。

また、再生可能エネルギー事業(太陽光発電所)や建設事業も展開しており、環境配慮型経営を推進している。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名河村産業株式会社
本社所在地〒512-8052 三重県四日市市西大鐘町330番地
電話番号059-337-1122
ウェブサイトhttps://www.kawamura-s.co.jp/
主要事業精密スリット加工、プラズマ表面処理、絶縁材料加工
代表者代表取締役 河村 昭利
従業員数280名(令和6年6月現在)

4.6 株式会社SANKEI(SANKEI Co., Ltd.)

【企業概要と戦略的ポジショニング】

鈴鹿市に本社を置く株式会社SANKEIは、金属製オフィス家具の専門メーカーである。

特に「折りたたみ椅子」においては国内製造シェアNo.1を誇る。

安価な輸入品が増える中で、同社は「国内一貫生産」にこだわり、企画・開発・設計・パイプ加工・塗装・組立・販売までを鈴鹿の拠点で完結させている。

これにより、高品質な製品を短納期で提供することを可能にしている。

また、環境負荷低減を重視した設計や、ユニバーサルデザインを取り入れた製品開発を行い、オフィス家具市場でのブランド力を維持している。「Sankei Net Shop」を通じた直販体制も強化している。

【企業データ】

項目詳細情報
会社名株式会社SANKEI
本社所在地〒513-0017 三重県鈴鹿市上野町字助町48番地
電話番号059-378-0465
ウェブサイトhttps://www.isu-sankei.co.jp/
主要事業金属製家具(折りたたみ椅子、テーブル等)の製造販売
代表者代表取締役 岡田 篤典

5. 結論:三重県製造業の未来展望

本調査を通じて浮き彫りになったのは、三重県の製造業が持つ「適応力」と「深化」である。

  1. 技術の複合化(Hybridization):金属加工企業が樹脂加工を取り入れ(三重精機)、化学メーカーが医療機器を作る(三重化学工業)。単一技術に固執せず、複数の技術を組み合わせて付加価値を生み出す動きが加速している。
  2. 一貫体制の構築(Integration):伊藤製作所や三重ダイキャスト工業のように、設計・試作から量産・後処理までを「ワンストップ」で提供する企業が増えている。これは、顧客(大手セットメーカー)の開発リードタイム短縮要求に応えるための必然的な進化である。
  3. グローバル・ニッチ・トップ(GNT)の台頭:ナベル(ジャバラ)や紀和マシナリー(専用MC)のように、特定のニッチ市場において世界的な競争力を持つ企業が、地方都市(伊賀、名張)から生まれている。

三重県の企業は、中京工業地帯のサプライチェーンの一員としての役割を果たしつつも、独自の技術と戦略で「代替の効かない存在」へと進化を遂げている。

本報告書に掲載された企業群は、日本のモノづくりの強靭さを示す縮図と言えるだろう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次