

1. 序論:中京工業地帯におけるモノづくりの地政学と産業クラスターの進化
日本列島の中央に位置する愛知県は、世界屈指の産業集積地である中京工業地帯の中核を成し、長きにわたり日本の製造品出荷額等において首位を維持し続けています。
この地域は、トヨタ自動車を頂点とする自動車産業の巨大なサプライチェーン、航空宇宙産業の国家戦略特区、そしてこれらを支える工作機械や素材加工産業が多層的に集積する、極めて密度の高い産業クラスターを形成しています。
本報告書は、愛知県内に拠点を置く「金属加工」「機械製造」「プラスチック加工」の主要企業について、その所在地、連絡先、事業概要を網羅的に整理するだけでなく、各社が保有するコア技術(Core Competence)、生産体制、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)やサステナビリティ(SDGs)への取り組みといった経営戦略の深層にまで踏み込んで分析を行うものです。
特に、単なる企業リストの羅列を超え、各企業がサプライチェーンの中でどのような役割を果たし、相互にどのように連携・補完し合っているのかという「産業生態系」の視点から記述を行います。
収集された膨大なデータ 1を分析すると、愛知県の製造業には、従来の「下請け」という概念では捉えきれない、高度な自律性と技術革新への意欲が見受けられます。
例えば、自社設備の開発から外販へと事業を拡張する企業や、金属と樹脂のハイブリッド加工によりEV(電気自動車)時代の軽量化ニーズに応える企業など、環境変化に対する適応力の高さが際立っています。
以下、産業分野ごとの詳細な分析と企業総覧を展開します。
2. 第1章:高度金属加工・精密切削・試作産業の最前線
愛知県の金属加工産業は、量産部品の安定供給を担う「マスカスタマイゼーション」と、航空宇宙や医療機器などの極限環境に耐えうる「超精密加工」の二極において、世界レベルの競争力を有しています。
このセクターでは、材料調達から表面処理までを一貫して請け負う「ワンストップサービス」の進化が顕著であり、顧客企業のサプライチェーン管理コスト削減に大きく貢献しています。
2.1 航空宇宙・ゲージ・超精密加工の旗手
渡辺精密工業株式会社 (Watanabe Precision Industries, Ltd.)
名古屋港エリアに位置する渡辺精密工業は、大量生産とは対極にある「一点もの」の超精密加工に特化した企業として、その名を知られています。
同社は、製造現場における「長さの基準」となるゲージ(測定器具)の設計製作を祖業としており、その測定技術と加工精度は、ミクロン単位の誤差も許されない航空宇宙部品の製造に応用されています。
【事業環境と技術特性】
同社の強みは、徹底した環境管理と熟練技能の融合にあります。工場内は厳密な温度管理(空調管理)がなされており、金属の熱膨張による微細な寸法変化さえも排除する環境が整えられています 。
ここで運用されるのは、最新鋭の高精度工作機械ですが、それらの性能を極限まで引き出すのは、同社が独自に開発した専用治具や工具、そして「キサゲ加工」に代表される職人の手技です。
航空宇宙産業においては、チタン合金やインコネルといった難削材の加工が求められますが、同社はこれらの素材に対しても安定した加工精度を実現しており、「愛知ブランド企業」としての認定も受けています 。
これは、同社の技術が単なる加工請負ではなく、顧客(重工メーカー等)の開発パートナーとしての地位を確立していることを示唆しています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒455-0847 愛知県名古屋市港区十一屋一丁目59番地の1 3 |
| 代表者 | 代表取締役社長 寺西 正明 3 |
| 設立 | 1947年 3 |
| 資本金 | 2,400万円 3 |
| 従業員数 | 42名 3 |
| 事業内容 | 航空宇宙部品、ゲージ、治工具、加工部品の設計製作 |
| URL | https://www.wsl-g.co.jp 3 |
株式会社放電エンジニアリング (Houden Engineering Co., Ltd.)
愛知県清須市に本社を構える放電エンジニアリングは、その社名が示す通り、「電気放電加工(Electrical Discharge Machining: EDM)」をコア技術とするプロフェッショナル集団です。
切削工具が物理的に届かない形状や、硬度が高すぎて刃物が立たない素材に対して、電気エネルギーを用いて非接触で加工を行うこの技術は、金型製作や航空宇宙エンジンの部品加工において不可欠なものです。
【技術優位性とサービスモデル】
同社の特筆すべき点は、「24時間365日フル稼働」の生産体制を敷いていることです 。
これは、製造業における「駆け込み寺」としての機能を果たしており、急な設計変更や金型破損などのトラブルに対して、即座に対応できる体制を整えています。
設備面においても、国内最大級の大型放電加工機や高精度ワイヤーカット機を多数保有しており、微細加工から大型ワークまで幅広いニーズに対応可能です。
さらに、同社は航空宇宙産業向けの品質マネジメントシステム規格である「AS9100」の認証を取得しており 、グローバルな航空機サプライチェーンに参画するためのパスポートを有しています。
また、SDGsへの取り組みも宣言しており、持続可能なモノづくりを推進する姿勢を明確にしています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社・清須工場 | 〒452-0932 愛知県清須市朝日愛宕62番地の1 |
| 小牧工場 | 〒485-0059 愛知県小牧市小木東1丁目81 |
| 電話番号 | 052-409-2641 (本社代表) |
| URL | https://www.houdeneng.co.jp |
| 認証取得 | ISO9001, ISO14001, AS9100 |
2.2 統合型金属加工・調達ソリューション企業
株式会社美嘉工業 MECO日本支社 (Mika Kogyo Co., Ltd.)
美嘉工業は、長野県に本社を置きながらも、中部地方の製造業ネットワークにおいて重要な位置を占める企業です。
金属切削加工業界のランキングにおいても上位に位置しており 、その影響力は県境を越えています。
同社の最大の特徴は、素材(ダイカスト・鋳造)の製造から、精密機械加工、表面処理(塗装・メッキ)、そして最終組立に至るまでを自社グループ内で完結させる「一貫生産体制」にあります。
【一貫生産の経済的合理性】
通常のサプライチェーンでは、鋳造業者から加工業者へ、さらに塗装業者へと製品が移動するたびに、輸送コストと管理コスト(横持ちコスト)が発生し、リードタイムも長期化します。
美嘉工業はこのプロセスを統合することで、劇的なコストダウンと納期短縮を実現しています 2。
特に注目すべきは、設計段階から関与する「DFM(Design for Manufacture)」の提案力です。
鋳造の特性(湯流れや収縮など)と、切削加工の特性(工具アプローチやクランプ位置など)の双方を熟知しているため、最も効率的で品質が安定する製品形状を顧客に提案することができます。
【保有設備と対応素材】
2023年5月時点で約70台の工作機械を保有しており、4軸マシニングセンタやCNC旋盤を駆使して、鉄、ステンレス、アルミ、真鍮、樹脂など多様な素材の加工に対応しています。
ISO 2768 fH準拠の公差基準を満たす精密加工能力は、光学機器や産業機械など幅広い分野で評価されています 。
| 項目 | 詳細データ |
| 所在地 | 長野県上伊那郡辰野町大字辰野1430-1 (MECO日本支社) |
| 事業内容 | ダイカスト、精密機械加工、表面処理、組立の一貫受託 |
| 主要設備 | CNCマシニングセンタ, CNC旋盤, ドリルタッピングセンタ等 約70台 |
| URL | https://meco.jp |
辰己屋金属株式会社 (Tatsumiya Metal Co., Ltd.)
大阪府東大阪市に本社を置く辰己屋金属は、非鉄金属の専門商社としての顔と、精密加工メーカーとしての顔を併せ持つハイブリッド企業です。
愛知県を含む中部圏の顧客に対し、材料の選定から加工品の納入までをトータルでサポートしています。
【難削材加工と材料調達のシナジー】
同社の強みは、ステンレス(SUS304, SUS316L等)や銅、鉛レス黄銅(エコブラス)といった「難削材」の加工ノウハウにあります 。
一般的に、材料商社は材料を売ることに専念し、加工業者は加工賃で稼ぐ構造ですが、辰己屋金属はこの両方を手がけることで、材料費と加工費のトレードオフを最適化するVA/VE(価値分析/価値工学)提案が可能となります。
京都工場には46台のNC複合旋盤(シチズンマシナリー製L20/L32、スター精密製SR-20/SR-32J等)を配備しており、月産数万個単位の量産能力を有しています 。
これにより、自動車部品、ガス機器、半導体製造装置部品など、品質と供給安定性が求められる分野での採用実績を積み重ねています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 大阪府東大阪市長田東4-4-10 |
| 生産拠点 | 京都工場 |
| 主要設備 | NC複合自動旋盤 46台 (シチズン, スター精密製) |
| 事業特性 | 非鉄金属材料商社機能と精密切削加工の融合 |
| URL | https://www.tatsumiya-metal.com |
株式会社阪井金属製作所 (Sakai Metal Manufacturing Co., Ltd.)
阪井金属製作所は、「金属加工.net」というプラットフォームを通じて、大阪・東大阪の町工場ネットワークと、中国・台湾・ベトナムの海外生産拠点を有機的に結合させた調達ソリューションを提供しています。
【グローバル調達と品質保証】
同社のビジネスモデルは、国内生産の精密さと、海外生産のコストメリットを使い分ける点にあります。
特に海外調達においては、国内調達と比較して約30%のコストダウンを提案しつつ、社内の品質管理体制により不良率を0.05%以下(良品率99.95%)に抑えるという高い信頼性を実現しています 。
ベトナム工場(ハナム省)では、60〜600トンのプレス機や射出成形機、マシニングセンタを保有しており、切削だけでなく板金、プレス、樹脂成形まで幅広い加工に対応可能です。
また、特急対応として「スーパーエクスプレス」サービスを提供しており、アルミ加工や板金加工において最短即日から3日での納品を可能にしています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 大阪府東大阪市渋川町2-1-2 |
| 海外拠点 | ベトナム工場 (ハナム省ホアマック工業団地) |
| 事業内容 | 精密機械加工、板金・プレス、樹脂加工、海外調達代行 |
| URL | https://www.kinzoku-kakou.net |
2.3 試作開発・モデル製作のスペシャリスト
株式会社岩本モデル製作所 (Iwamoto Model Manufacturing Co., Ltd.)
奈良県に拠点を置きますが、愛知県を含む東海エリアの製品開発を強力に支援する試作メーカーです。
岩本モデル製作所は、「モノづくり支援プロデューサー」を自認し、製品開発の初期段階であるデザインモデルやワーキングモデルの製作から、小ロット生産までをカバーしています。
【3Dデータ活用と多様な工法】
同社は3D CAD/CAMデータを活用したマシニング加工を得意としており、樹脂や金属のブロック材から複雑な形状を高精度に削り出します 。
さらに、光造形や真空注型といった積層造形・複製作成技術、簡易金型を用いた射出成形など、目的と予算、数量に応じた最適な工法を選択・提案できる点が強みです。
開発スピードが競争力を左右する現代において、見積もりの即日回答や最短3日での納品といったスピード対応は、多くのメーカーの設計部門にとって強力な武器となっています 。
| 項目 | 詳細データ |
| 所在地 | 奈良県生駒郡安堵町窪田43-1 |
| 事業内容 | デザインモデル・試作部品製作、真空注型、簡易金型成形 |
| URL | http://www.i-model.jp |
3. 第2章:自動車産業を支えるプレス・ばね・塑性加工クラスター
愛知県の産業基盤において最も厚みのある層を形成しているのが、自動車部品の量産を担うプレス加工、ばね製造、および関連する塑性加工企業群です。
このクラスターの特徴は、単一部品の製造にとどまらず、溶接、塗装、組立を含めたモジュール納入への対応と、グローバルな供給体制の構築、さらには「脱・炭素」「電動化」に向けた軽量化技術の追求にあります。
3.1 自動車機能部品・重要保安部品メーカー
豊生ブレーキ工業株式会社 (Hosei Brake Industry Co., Ltd.)
トヨタグループの一員であり、アイシン精機の連結子会社でもある豊生ブレーキ工業は、自動車の「止まる」機能を司るブレーキシステムの専門メーカーです。
ドラムブレーキを中心に、電動パーキングブレーキ(EPB)やディスクブレーキ部品を製造しており、その高い信頼性は世界中の自動車メーカーから認められています。
【生産体制と製品ポートフォリオ】
同社は、愛知県内に本社(豊田市)をはじめ、高浜工場、広瀬工場、岡崎工場などの生産拠点を展開し、さらに岐阜県土岐市や海外(中国、タイ)にも工場を持つグローバルサプライヤーです 。
主力製品のドラムブレーキに加え、プレス技術と溶接技術を高度に融合させた「アクスルハウジング」や「エアサスチャンバー」などの足回り部品も手がけています 。
これらの部品は、車両の重量を支え、走行安定性を左右する極めて重要な機能部品であり、高度な強度解析と品質保証体制が不可欠です。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒470-1293 愛知県豊田市和会町道上10番地 |
| 代表電話 | 0565-21-1213 |
| 設立 | 1968年5月 |
| 資本金 | 64億3,600万円 |
| 売上高 | 連結1,012億円 (2025年3月期) |
| 従業員数 | 連結2,080名 (2025年3月現在) |
| 主要株主 | 株式会社アドヴィックス、株式会社アイシン、トヨタ自動車株式会社 |
| URL | https://www.hosei.co.jp |
旭鉄工株式会社 (Asahi Tekko Co., Ltd.)
碧南市に本社を置く旭鉄工は、自動車のエンジン、トランスミッション、サスペンションなどに使用される精密部品メーカーですが、
近年では「DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功モデル」として、その名を世界に轟かせています。
【DXによる生産革新とソリューション外販】
同社は、自社の生産ラインにおける稼働状況を可視化するために、安価なセンサとクラウドを活用したIoTシステム「iXacs(アイザックス)」を独自に開発しました 。
これにより、設備稼働率の大幅な向上と労務費の削減を実現し、そのノウハウとシステム自体を他社に提供する「i Smart Technologies」を立ち上げました。
製造面では、エンジン用バルブガイドやピストン、トランスミッション部品など、高精度・高耐久が求められる部品を一貫生産しています。
また、消費者向け(BtoC)ブランドとして、その金属加工技術を活かしたアウトドア用品や消臭袋などの開発にも挑戦しており 1、下請け脱却とブランド構築の模範的な事例となっています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒447-8505 愛知県碧南市中山町7丁目26番地 |
| 事業内容 | 自動車部品製造(エンジン・駆動・制動部品)、IoTソリューション提供 |
| 取組名称 | BtoCからBtoBへ自社技術を活かした商品開発と持続可能な成長 |
| URL | https://www.asahi-tekko.co.jp |
株式会社高木製作所 (Takagi Manufacturing Co., Ltd.)
名古屋市中区に本社を置く高木製作所は、1890年(明治23年)創業という長い歴史を持つ老舗企業であり、自動車用小型プレス部品の分野で確固たる地位を築いています。
【グループ経営と多角化戦略】
同社の強みは、愛知県内の岡崎工場、新城工場に加え、群馬、福島、福岡、沖縄など全国に展開する生産ネットワークと、グループ企業による多角的な事業展開にあります 。
- 岡崎工場・新城工場: マザー工場として、プレス加工、溶接、表面処理(カチオン電着塗装等)を一貫して行い、燃料給油口カバーや各種ブラケットを量産しています。
- トーシンテック株式会社: タクシーの自動ドアや、福祉車両用のアシストステップ、車椅子スロープなどを開発・製造しており、高齢化社会に対応した製品を提供しています 。
- 株式会社そうぎょう: ホースクランプやファインメッシュ、切粉処理装置などの環境機器を製造しています 。
このように、自動車部品量産で培った技術をニッチな分野(福祉、環境)に応用することで、事業ポートフォリオの安定化を図っています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒460-0024 愛知県名古屋市中区正木3丁目6-6 |
| 代表電話 | 052-331-3461 |
| 主要工場 | 岡崎工場 (岡崎市), 新城工場 (新城市) |
| URL | https://takagi-mfg.co.jp |
3.2 ばね・フォーミング・パイプ加工の専門企業
知多鋼業株式会社 (Chita Kogyo Co., Ltd.)
春日井市に本社を置く知多鋼業は、「知多スプリング」のブランドで知られる独立系のばねメーカーです。
特に二輪車用サスペンションスプリングにおいては世界的なシェアと技術力を誇り、カヤバやヤマハ発動機といった大手メーカーの主要サプライヤーとなっています 。
【技術領域と新分野への挑戦】
同社の技術の中核は、線ばね(コイルスプリング)の成形と熱処理技術にあります。
金属疲労に対する耐久性を極限まで高めるための材料選定と加工プロセスは、長年の研究開発の賜物です。
また、薄板ばねやパイプ成形加工、切削加工といった周辺技術も取り込み、総合的な部品供給能力を有しています。
近年では、その振動制御や弾性材料のノウハウを活かし、自動車以外の分野、例えば産業機械や歯科医療品分野への進出も果たしており 11、技術の多用途展開を積極的に進めています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒486-0903 愛知県春日井市前並町2丁目12番地4 |
| 代表電話 | 0568-27-7771 |
| 資本金 | 8億1,907万円 |
| 主要取引先 | カヤバ、ヤマハ発動機、Astemo、TOYO TIRE 等 |
| URL | http://www.chitakogyo.co.jp |
株式会社東海理機 (Tokai Riki Co., Ltd.)
大府市に拠点を置く東海理機は、各種スプリング、プレート、ワイヤーフォーミング製品の開発から製造までを一貫して行う企業です。
創業から50年以上の歴史を持ち、「開発・設計・生技一貫」「部品〜Assy一貫」「品質一貫」という3つの統合システムを強みとしています 。
【マルチマテリアル化への対応】
特筆すべきは、金属加工だけでなく樹脂成形技術も保有している点です。
これにより、金属製のばねやプレス部品と、樹脂部品を組み合わせたモジュール製品(複合部品)の設計・製造が可能となっています 。
自動車の軽量化が至上命題となる中で、金属部品の樹脂化や、異種材料接合による高機能化は、ティア1・ティア2サプライヤーとしての存在感を高める重要な要素です。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒474-8557 愛知県大府市横根町惣作70番地 |
| 代表電話 | 0562-46-2281 |
| URL | https://www.tokai-riki.co.jp |
3.3 鉄道車両・インフラ関連
株式会社成田製作所 (Narita Mfg., Ltd.)
名古屋市熱田区に本社を置く成田製作所は、新幹線をはじめとする鉄道車両の重要部品を製造する、インフラ産業の守護者とも言える企業です。
【鉄道車両部品のトップランナー】
主力製品である「車両間連結ホロ(幌)」は、高速走行する鉄道車両の連結部を覆い、乗客の安全と快適な移動空間を確保する極めて重要な部品です 。
これに加え、車両用の水タンクや燃料タンク、ドア、内装パネルなど、大型の板金・溶接構造物を得意としています。
鉄道部品には、数十年の使用に耐える耐久性と、万が一の事故に対する安全性が求められます。
成田製作所は、アルミやステンレスの特殊溶接技術と厳格な品質管理体制(ISO9001, ISO14001)により、JR各社や車両メーカーからの信頼を獲得しています。
また、41件の特許(海外含む)を保有するR&D志向の企業でもあります 。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒456-0033 愛知県名古屋市熱田区花表町20-12 |
| 米国拠点 | NARITA MFG., INC (イリノイ州) |
| 事業内容 | 鉄道車両部品(ホロ、タンク、ドア等)、自動車部品、広告宣伝関連 |
| URL | https://www.narita.co.jp |
4. 第3章:産業機械・ロボット・FAシステム製造のエコシステム
愛知県は「機械が機械を作る」場所でもあります。ここでは、世界中の工場で使用される工作機械や組立ロボット、そして物流システムが生み出されています。
このセクターの企業は、ハードウェアの製造だけでなく、ソフトウェアや制御技術を統合した「スマートファクトリーソリューション」の提供へとビジネスモデルを進化させています。
4.1 世界を動かす実装ロボットと工作機械
株式会社FUJI (FUJI Corporation)
知立市に本社を置くFUJIは、電子部品実装ロボット(マウンター)の世界トップメーカーであり、現代のエレクトロニクス社会を根底から支える企業です。
スマートフォン、PC、自動車のECUなど、あらゆる電子機器の基板は、同社のロボットによって高速かつ高精度に部品が配置(実装)されています。
【技術革新と多角化】
同社の主力製品「NXT」シリーズは、モジュール交換方式を採用し、生産品目の変更に柔軟に対応できる設計が評価されています 。
また、工作機械部門では、自動車部品加工用のモジュール型NC旋盤「DLFn」シリーズなどを展開し、ライン構築の自由度を高めています。
近年では、これらの技術を応用した新規事業にも積極的です。
例えば、宅配ロッカーシステム「Quist(クイスト)」 1 は、物流のラストワンマイル問題や非対面受け取りのニーズに応える社会インフラ製品として注目されています。
さらに、介護支援ロボットや移乗サポートロボットの開発も手がけており、産業用ロボットの技術を生活支援分野へと展開しています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒472-8686 愛知県知立市山町茶碓山19番地 |
| 代表電話 | 0566-81-2111 |
| 設立 | 1959年4月 |
| 資本金 | 58億7,800万円 |
| 売上高 | 連結1,273億円 (2025年3月期) |
| 従業員数 | 連結2,976名 (2025年3月現在) |
| 主要拠点 | 豊田事業所、岡崎工場、東京・大阪支店、米国・欧州・中国・インド拠点 |
| URL | https://www.fuji.co.jp |
旭精機工業株式会社 (Asahi-Seiki Manufacturing Co., Ltd.)
尾張旭市の旭精機工業は、日本の産業機械史において特異な地位を占める企業です。
「小口径銃弾」の国内唯一のメーカーという防衛産業の顔と、その製造技術から派生した高精度プレス機械メーカーとしての顔を併せ持っています。
【機械と加工の相互進化】
同社の強みは「機械事業部」と「精密加工事業部」のシナジーにあります。
自社で開発したトランスファープレス機(iTPシリーズ等)を用いて、自社工場で精密部品を量産する。このプロセスを通じて得られた機械への改善点は、即座に次世代機の開発にフィードバックされます 。
特に、リチウムイオン電池ケース(円筒缶)の製造においては、同社のトランスファープレスが圧倒的な生産性と精度を発揮し、世界的なEVシフトを設備面から支えています。
また、ばね機械(スプリングフォーマー)や、物流搬送システム(仕分け機)など、ニッチながらも高付加価値な機械装置を多数ラインナップしています 19。
【主要製品ラインナップ(抜粋)】
| カテゴリ | モデル名 | 特徴・用途 |
| トランスファープレス | iTP-60 / 60W | リチウムイオン電池ケース(21700缶)製造用。高剛性・直動垂直トランスファ。 |
| LTP-45 | 高速リニアガイド採用、18650電池缶製造用。 | |
| TPシリーズ | スタンダードモデル(15〜150トン)。汎用性が高い。 | |
| ばね機械 | T2 / T4 | CNCスプリングフォーマー。多様なばね成形に対応。 |
| USX-5 / 8 | 5軸ユニバーサルユニット搭載、複雑な複合加工が可能。 | |
| 搬送装置 | TRANSUB | 独自の仕分け搬送システム。 |
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒488-8655 愛知県尾張旭市旭前町新田洞5050-1 |
| 代表電話 | 0561-53-3112 |
| URL | https://www.asahiseiki-mfg.co.jp |
4.2 独自技術によるニッチトップ・マシナリー
株式会社三明製作所 (Sanmei Works Co., Ltd.)
春日井市の三明製作所は、「転造(てんぞう)」という特殊な塑性加工技術に特化したエキスパート企業です。
転造とは、金属を削るのではなく、強い力を加えて盛り上げたり凹ませたりして形状を作る技術で、ねじやギヤ、スプライン軸などの製造に用いられます。
【転造技術の総合コンサルティング】
同社は、転造盤(機械本体)、転造ダイス(工具)、そして自動化システム(ローダー等)のすべてを自社で開発・製造できる国内でも稀有なメーカーです 21。この「三位一体」の体制により、顧客の特定のワークに最適な加工条件をトータルで提案することができます。
転造は、切削加工に比べて材料の無駄(切り粉)が出ず、加工硬化により製品強度が増し、加工時間も短いというメリットがあります。
これは、SDGsや省エネルギーが求められる現代のモノづくりにおいて、再評価されている技術です。
同社は国内シェアの約6割を握るトップメーカーとして、愛知ブランド企業にも認定されています 。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒486-0907 愛知県春日井市黒鉾町大久手146-8番地 |
| 代表電話 | 0568-34-8818 |
| 従業員数 | 49名 |
| URL | http://www.sanmei-works.jp |
株式会社メイキコウ (Meikikou Corporation)
豊明市に拠点を置くメイキコウは、マテリアルハンドリング(マテハン)、すなわち「モノの移動」に関わる機器の専門メーカーです。
【物流と福祉の架け橋】
主力製品の「シザーリフト(テーブルリフト)」は、パンタグラフ機構を用いて重量物を昇降させる装置で、工場の生産ラインや物流センターのトラックバースなどで不可欠な設備です 。
また、コンベアシステムや、クリーンルーム内での搬送システムなど、工場の自動化・合理化を支える多様なソリューションを提供しています。
特筆すべきは、産業用リフトの技術を応用して、段差解消機などの「介護福祉機器」を開発・商品化している点です 。
これにより、高齢者や車椅子利用者の移動バリアフリー化に貢献しており、産業技術の社会実装の好例となっています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒470-1111 愛知県豊明市大久伝町東180番地 |
| 代表電話 | 0562-92-7111 |
| 従業員数 | 240名 |
| 主要拠点 | 東京、大阪、仙台、北関東、中部支店 |
| URL | https://www.meikikou.co.jp |
5. 第4章:機能性プラスチック・フィルム・ハイブリッド加工の革新
愛知県のモノづくりは金属だけではありません。
化学・樹脂産業においても、独自の技術を持つ企業が多数存在します。
特に、食品ロス削減に貢献する高機能フィルムや、意匠性の高い化粧品容器、そして金属代替としてのエンジニアリングプラスチック加工は、産業の付加価値を高める重要な要素です。
5.1 高機能フィルム・包装資材のパイオニア
中本アドバンストフィルム株式会社 (Nakamoto Advanced Film Co., Ltd.)
東郷町に本社を置く中本アドバンストフィルム(旧社名:MICS化学)は、2024年8月に中本パックスグループの完全子会社として新たなスタートを切りました 。
同社は、プラスチック多層チューブフィルムのパイオニアとして知られています。
【多層共押出技術とFilmicsブランド】
同社のコア技術である「多層共押出(Co-extrusion)」は、性質の異なる複数の樹脂(ナイロン、ポリエチレン、EVOHなど)を同時に押し出して、一枚のフィルムにする技術です。
これにより、酸素を通さない(ガスバリア性)、突き刺しに強い(耐ピンホール性)、熱に強い(耐熱性)といった複数の機能を併せ持つフィルム「Filmics(フィルミックス)」シリーズを展開しています 。
これらのフィルムは、食品の真空包装やボイル殺菌、冷凍保存に使用され、賞味期限の延長による食品ロス削減に貢献しています。
また、医療分野や工業部品の包装、さらには「Filmics Shu-Lock」のような一般消費者向けの消臭袋など、用途は多岐にわたります。
最近では、リサイクル素材を使用した「Filmics SRe」など、環境配慮型製品の開発にも注力しています 。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒470-0151 愛知県愛知郡東郷町諸輪北山158-89 |
| 代表電話 | 0561-39-1211 |
| 設立 | 1971年 (旧オザキ軽化学として) |
| 主要製品 | 多層チューブフィルム、単層フィルム、グラビア印刷、製袋加工 |
| URL | https://n-advf.com |
5.2 化粧品容器・精密樹脂成形の美学
株式会社三葵コーポレーション (Sanki Corporation)
岡崎市の三葵コーポレーションは、自動車部品製造からスタートし、現在では化粧品容器の製造・販売に特化した企業へと変貌を遂げたユニークな歴史を持ちます 。
【デザインと機能の融合】
化粧品容器には、中身の保護という機能性だけでなく、消費者の購買意欲をそそる高いデザイン性と質感が求められます。
同社は、射出成形(コンパクトケース等)やブロー成形(ボトル等)の技術に加え、塗装、蒸着、ホットスタンプ、シルク印刷といった加飾技術を社内に保有しており、顧客のイメージを忠実に具現化することができます 。
また、金型の設計・製作も内製化しているため、開発リードタイムの短縮が可能であり、トレンドの移り変わりが早い化粧品業界のニーズに迅速に対応しています。
「創る、高める、未来のカタチ」をビジョンに掲げ、100年企業を目指すサステナブルな経営方針も特徴的です 。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒444-0871 愛知県岡崎市大西2丁目5-1 |
| 代表電話 | 0564-24-9531 |
| 設立 | 1962年10月 |
| 従業員数 | 100名 |
| URL | https://www.sanki-corp.jp |
株式会社三洋製作所 (Sanyo Seisakusho)
名古屋市緑区に拠点を集約する三洋製作所は、プラスチックの精密成形と金型製作のエキスパートです。
本社工場(金型)、鳴海工場(成形)、山下工場(成形)、物流センターと、機能別に特化した拠点を近隣に配置し、効率的な生産・物流体制を構築しています 。
【グローバル展開と地域密着】
同社は、岐阜県恵那市や香港にも拠点を持ち、グローバルなサプライチェーンの一翼を担っています 。
具体的な製品分野は多岐にわたりますが、中部日本プラスチック製品工業協会に所属しており、地域の樹脂加工産業の発展にも寄与しています。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒458-0801 愛知県名古屋市緑区鳴海町下汐田183 (管理棟) |
| 代表電話 | 052-621-5238 |
| URL | http://www.sanyo-ssc.co.jp |
5.3 金属・樹脂ハイブリッド加工のイノベーター
株式会社コデラダイナックス (Kodera Dynax)
知多郡武豊町に本社を置くコデラダイナックスは、金属プレスと樹脂成形という、通常は別々の会社が行うことが多い二つの異なる加工技術を、高いレベルで併せ持つ自動車部品メーカーです。
【マルチマテリアル時代の申し子】
自動車業界では、燃費向上と航続距離延長のために、部品の「軽量化」が至上命題となっています。
そのための有力な手法が、金属部品の樹脂化や、金属と樹脂を一体化させた「マルチマテリアル化」です。
コデラダイナックスは、600トン順送プレスなどの金属加工設備と、850トン射出成形機などの樹脂加工設備を同一工場内に保有しています 。
これにより、例えば金属製のインサート部品をプレスで作り、それを即座に金型にセットして樹脂で包み込む(インサート成形)といった複合加工を、ワンストップで行うことができます。
主力製品は、エンジンマウントなどの防振部品、EGRクーラーやラジエータタンクなどの熱交換器部品です 。
また、これらの金型や生産設備自体も内製化しており、技術のブラックボックス化による競争優位性を確保しています。愛知ブランド企業認定 1。
| 項目 | 詳細データ |
| 本社所在地 | 〒470-2531 愛知県知多郡武豊町大字冨貴字高代6-6 |
| 代表電話 | 0569-72-7591 |
| 設立 | 1963年4月 |
| 従業員数 | 200名 |
| 主要取引先 | アイシン、アイシンシロキ、ティラド、豊生ブレーキ工業 等 |
| URL | https://www.cdx.co.jp |
6. その他関連企業・サプライヤー総覧
愛知県の産業集積を支えるのは、加工メーカーだけではありません。
加工油の供給や、特殊なモデル製作、そしてグローバルな素材供給を担う企業群が存在します。
ユカワ化工油株式会社 (Yukawa Kako Oil Co., Ltd.)
大阪本社ですが、愛知県岡崎市に拠点を持ち、切削加工に不可欠なクーラント(切削油)を提供しています。
特に同社の「beacon(ビーコン)」シリーズは、液の劣化状態をセンシングして可視化する「切削見える化DX」機能を備えており、加工現場のIoT化と環境負荷低減を同時に実現するソリューションとして注目されています 。
吉田工業株式会社 (Yoshida Industry Co., Ltd.)
静岡県掛川市の企業ですが、愛知県の自動車サプライチェーンと密接に関わっています。
NC旋盤とマシニングセンタを用いた精密切削加工に加え、アルミの重力鋳造(グラビティ鋳造)からの一貫生産を得意としており、マスターシリンダーなどの重要保安部品を量産しています 。
7. 結論:愛知モデルの未来と産業界への示唆
本報告書における詳細な調査を通じて、愛知県の金属・機械・プラスチック加工産業が、単なる「下請け工場」の集合体ではなく、極めて戦略的かつ有機的に結合した「産業生態系」であることが明らかになりました。
主要なインサイトと将来展望:
- 「一貫生産」の標準化: 美嘉工業、高木製作所、コデラダイナックスなど、多くの有力企業が、素材→加工→組立までを一貫して行う体制を構築しています。これは、サプライチェーン寸断リスクへの対策であると同時に、ブラックボックス化による技術流出防止、そして高付加価値化への必須条件となっています。
- 「設備の内製化」と外販: 旭鉄工のIoTシステムや、旭精機工業、三明製作所の専用機開発に見られるように、自社の課題解決のために開発したツールや機械を、新たな収益源として外販する動きが加速しています。これは、製造業が「モノ(製品)」だけでなく「コト(ソリューション)」を売るサービス業へと進化していることを示しています。
- 「脱・自動車一本足」への模索: 豊生ブレーキや高木製作所(トーシンテック)のように、自動車部品で培った高い信頼性と量産技術を、福祉、医療、環境、航空宇宙といった成長分野へ転用する動きが活発です。EV化によるエンジン部品の減少を見据え、企業の存続をかけた事業ポートフォリオの転換が進んでいます。
- 「愛知ブランド」の求心力: 県独自の認定制度である「愛知ブランド企業」は、単なる表彰にとどまらず、優れた技術を持つ中小企業の「信用力」を担保する重要なプラットフォームとして機能しています。これにより、優れた技術を持ちながらも知名度の低いBtoB企業が、人材採用や新規取引開拓において有利なポジションを得ています。
結論として、愛知県の加工産業は、伝統的な「カイゼン」文化と、最新のデジタル技術(DX)、そしてサステナビリティ(SDGs)への意識が高い次元で融合した、世界でも稀有なイノベーション・ハブであり続けるでしょう。
調達担当者やエンジニアにとって、この地域は単なる部品発注先ではなく、共に課題を解決する「共創パートナー」を見つけるための最適なフィールドであると言えます。
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