

1. 序論:北関東工業地帯における栃木県の戦略的地位
1.1 地理的優位性と産業集積の歴史的背景
栃木県は、首都圏の北部に位置し、東北自動車道および北関東自動車道という二大物流動脈が交差する交通の要衝である。
この地理的特性は、原材料の調達から完成品の出荷に至るまで、サプライチェーン・マネジメント(SCM)において極めて有利な条件を提供している。
歴史を紐解けば、栃木県南西部(足利市・佐野市周辺)は古くからの繊維産業の集積地であり、そこから派生した織機製造、染色機械、そして金属加工技術が、今日の近代工業の礎となっている。
一方で、県央部(宇都宮市周辺)や県北部(那須塩原市・大田原市)は、豊富な水資源と安価で広大な産業用地を背景に、戦後、内陸型工業団地(清原工業団地、平出工業団地など)が整備された。
これにより、大手企業の誘致とそれに伴うティア1・ティア2サプライヤーの集積が進み、自動車産業、航空宇宙産業、そして医療機器産業という高度な産業クラスターが形成されたのである。
1.2 本報告書の目的と構成
本報告書は、栃木県内に拠点を置く金属・機械・プラスチック加工企業を網羅的に調査し、その技術的特異性、事業戦略、および地域経済への貢献を詳細に分析することを目的とする。
単なる企業リストの羅列にとどまらず、各社が保有するコア技術(例:微細加工、スーパーエンプラ成形、ホーニング加工等)がいかにしてグローバルな競争優位性を生み出しているかを解き明かす。
分析対象は、「医療・精密機器」「輸送用機器・金属加工」「産業用機械・自動化」「高機能プラスチック・環境」の4つの主要セクターに分類し、各セクターを牽引する企業の詳細なプロファイルを提供する。
また、ユーザーの要請に基づき、各社の所在地、連絡先、ウェブサイトへのリンクを完備し、実用的なビジネスリソースとしての価値も追求する。
2. 第1章:医療・精密機器クラスター ~「メディカルバレー」の形成と深化~
栃木県は、医療機器の製造出荷額において全国有数の規模を誇る。
特に「削る」「刺す」といった治療行為に直結するデバイスにおいて、世界トップシェアを持つ企業が存在することは特筆に値する。
これらの企業は、汎用品の大量生産ではなく、極めて高い品質基準が求められるニッチ市場において圧倒的なブランド力を築いている。
2.1 株式会社ナカニシ (NAKANISHI INC.)
企業概況とグローバル戦略
株式会社ナカニシは、栃木県鹿沼市に本社を置く、歯科用回転機器(ハンドピース)の世界トップメーカーである。1930年の創業以来、「削るテクノロジー」を追求し続け、現在では世界135カ国以上で製品を販売している。
同社の強みは、開発、製造、販売の主要機能を国内(本社およびA1工場)に集中させることで、徹底した品質管理を実現している点にある。
これは、人件費の安さを求めて海外生産にシフトする多くの製造業とは一線を画す戦略であり、「Made in Japan」ではなく「Made in Tochigi」のブランド価値を世界に発信している 1。
技術的特異性:超高速回転と超音波
ナカニシの技術的核心は、以下の2点に集約される。
- 超高速回転技術: 歯科用エアタービンにおいて、毎分40万回転(400,000 min-1)という驚異的な回転速度を実現している。この速度は、歯牙の切削効率を最大化し、患者への振動や不快感を最小限に抑えるために不可欠である。この技術は、微細なベアリングの製造技術や、流体力学に基づいたタービンブレードの設計技術に支えられている。
- 超音波技術: 毎秒2万回~3万回の微細振動を利用した超音波スケーラー(歯石除去器具)や超音波カッターは、組織へのダメージを抑えつつ、硬組織のみを選択的に破砕・切削することを可能にする。
事業ポートフォリオの拡張
同社は歯科分野での成功を基盤に、事業領域を以下の3つに拡大している。
- 歯科事業: ハンドピース、超音波スケーラー、歯面清掃機など。世界シェアNo.1を堅持。
- 外科事業: 脳神経外科や脊椎外科で使用される高速ドリルシステム。骨の切削において、ミクロン単位の制御が求められる分野であり、同社の回転技術が直結する市場である。
- 機工事業(産業用): 自動車部品やスマートフォン、精密金型の加工に使用される高精度スピンドル。自動化された生産ラインに組み込まれることで、工場の生産性向上に寄与している。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社ナカニシ |
| 代表者 | 代表取締役社長執行役員 中西 英一 |
| 本社所在地 | 〒322-8666 栃木県鹿沼市下日向700 |
| 電話番号 | 0289-64-3380 (代表) |
| FAX | 0289-62-5636 |
| 公式URL | http://www.nakanishi-inc.jp/ |
| 創業 | 1930年 |
| 従業員数 | 1,324名 (2022年6月末時点、連結含む) |
| 主な拠点 | A1・A1+工場(鹿沼市深程)、東京、大阪、ドイツ、米国、中国等 |
2.2 マニー株式会社 (MANI, INC.)
企業概況と「品質世界一」への執念
マニー株式会社は、宇都宮市の清原工業団地に本社工場を構える、手術用縫合針、眼科ナイフ、歯科用治療器具の専門メーカーである。
同社の経営哲学は極めて明確であり、「世界一の品質を実現できない製品はやらない」「製品寿命の短い製品はやらない」というニッチトップ戦略を貫いている。
この徹底した方針により、高い営業利益率を維持し、2008年には優れた戦略を持つ企業に贈られる「ポーター賞」を受賞している 7。
技術的革新:18-8ステンレスの微細加工
マニーの歴史的転換点は、1961年に世界で初めてオーステナイト系ステンレス(18-8ステンレス)を用いた手術針の開発に成功したことにある。
- 素材特性の克服: 当時主流だった鉄製の針は錆びやすく、折れやすいという課題があった。ステンレスは錆びにくい反面、加工硬化を起こしやすく、微細な針への加工は困難を極めた。マニーは独自の伸線技術と熱処理技術により、この素材特性を克服し、「錆びない・折れない(曲がることで折損を防ぐ)」針を実現した。
- 眼科ナイフの切れ味: 現在、世界シェア約30%を誇る眼科ナイフは、白内障手術などで角膜を切開するために使用される。ナノレベルの研磨技術により実現されたその切れ味は、「豆腐を切るような感覚」と医師から評されるほどであり、治癒期間の短縮に貢献している。
- 一貫生産体制: 素材となるステンレス線材の加工から、成形、研磨、滅菌、包装に至るまでを自社グループ内で完結させている。特に、針に糸を接合する「アイレス針」の製造において、糸メーカーに対してカシメ機ごと提供するというビジネスモデルも展開しており、サプライチェーン全体への影響力を持っている。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | マニー株式会社 (清原本社工場) |
| 代表者 | 代表取締役社長 渡部 眞也 |
| 本社所在地 | 〒321-3231 栃木県宇都宮市清原工業団地8番3 |
| 電話番号 | 028-667-1811 |
| FAX | 028-667-8341 |
| 公式URL | http://www.mani.co.jp/ |
| 創業 | 1956年 |
| 資本金 | 10億8,700万円 |
| 事業所 | 清原工場、高根沢工場、海外(ベトナム、ラオス、ミャンマー等) |
2.3 金子メディックス株式会社
企業概況とOEMスペシャリストとしての地位
那須塩原市に本社を置く金子メディックスは、医療用注射針の製造に特化したOEM(相手先ブランド製造)メーカーである。
自社ブランドを持たず、国内外の大手医療機器メーカーの「工場」として機能することで、月産7,000万本、年間約8億本という膨大な生産量を支えている。
このビジネスモデルは、特定の医療機器メーカーの業績変動リスクを分散し、安定した経営基盤を構築することを可能にしている 。
技術的特異性:全自動研削とクリーン洗浄
注射針の製造は、単純なパイプカットではなく、極めて高度なプロセスを経て行われる。
- テープレス全自動研削: 注射針の先端形状(ランセットポイント等)を形成するために、独自開発の全自動研削機を保有している。これにより、痛みを軽減する鋭利な刃先を安定して大量に生産することが可能である。
- ファイバーレーザー溶接: 極細のステンレスパイプとハブ(取り付け部)を接合する際、従来のエポキシ樹脂による接着ではなく、ファイバーレーザーを用いた溶接技術を確立している。これにより、溶出物のリスクを排除し、より安全性の高い製品を提供している。
- 洗浄と滅菌: 体内に直接挿入される製品であるため、洗浄工程は製造の要である。同社は超音波洗浄や独自の洗浄プロセスを確立し、ISO13485(医療機器品質マネジメントシステム)に基づいた厳格な管理下で製造を行っている。
- 新本社の設立: 2020年には那須塩原市槻沢に新本社棟および工場を完成させ、生産能力の増強と効率化を図っている。これは、世界的な需要増(ワクチン接種や糖尿病治療など)に対応するための戦略的投資である。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 金子メディックス株式会社 |
| 代表者 | 代表取締役 坂下 武芳 |
| 所在地 | 〒329-2703 栃木県那須塩原市槻沢342-17 |
| 電話番号 | 0287-36-6688 |
| FAX | 0287-36-5827 |
| 公式URL | https://www.kaneko-medix.co.jp |
| 創業 | 1962年 |
| 従業員数 | 235名 (2024年7月時点) |
| 認証 | ISO13485:2016 |
2.4 タクセル株式会社
企業概況とプラスチックの微細加工
栃木市に拠点を置くタクセル株式会社は、1924年の創業時はセルロイド加工からスタートし、時代の変化に合わせてプラスチック射出成形へと技術を進化させてきた企業である。
現在は、医療機器および理化学分野向けのプラスチック部品製造を主力事業としている。
同社の特徴は、プラスチック成形工場でありながら、医療機器製造業としての許可を持ち、クラス100,000のクリーンルーム内での成形・組立サービスを提供している点にある。
これにより、コンタミネーション(異物混入)が許されないDNA検査キットや細胞培養容器などのバイオ・メディカル製品の一貫生産が可能となっている 22。
技術的特異性:マイクロニードルとRHCM技術
タクセルが保有する独自技術の中で最も注目すべきは、RHCM(Rapid Heat Cycle Molding:ヒート&クール成形)技術を応用した微細転写技術である。
- マイクロニードル: 美容や医療分野で注目される「痛くない注射針」。皮膚の角質層のみを貫通する微細な針をプラスチックで成形するためには、金型の微細なキャビティに樹脂を完全に充填させる必要がある。RHCM技術は、金型温度を瞬時に昇温・冷却することで、樹脂の流動性を高め、ミクロン単位の微細形状を忠実に転写することを可能にする。
- マイクロ流路チップ: 血液検査などで使用される、微細な溝(流路)を持つチップの成形にもこの技術が応用されている。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | タクセル株式会社 |
| 代表者 | 代表取締役社長 小林 学 |
| 本社・栃木工場 | 〒322-0603 栃木県栃木市西方町本郷600番地 |
| 電話番号 | 0282-92-0091 |
| FAX | 0282-92-0134 |
| 公式URL | https://takcel.co.jp/ |
| 創業 | 1924年 (大正13年) |
| 資本金 | 1億円 |
| 事業内容 | 医療機器・理化学向けプラスチック部品生産、マイクロニードル製造 |
2.5 株式会社鎌田スプリング
企業概況と技術の応用展開
鹿沼市の株式会社鎌田スプリングは、精密ばねの製造技術を核に、医療分野や環境分野へと事業を多角化させているユニークな企業である。
通常、ばねメーカーは自動車や家電向けの部品供給にとどまることが多いが、同社は「弾性」や「加工技術」を応用し、自社製品の開発にも積極的である 27。
技術的特異性:極細線加工と鳥獣対策
- 医療用部品: φ0.05mm~という髪の毛よりも細い線材を加工する技術を持ち、内視鏡の操作性を左右する「螺旋管(コイルチューブ)」やカテーテル補強材を製造している。また、医療用注射針の製造にも参入しており、鹿沼工場は東北道鹿沼インターから至近という好立地を活かして製品を供給している。
- レーザー加工: 80μm(ミクロン)という極めて微細な突き合わせレーザー溶接技術を有しており、パイプ加工やアッセンブリ(組立)において強度と精度を両立させている。
- 害獣捕獲資材(松島式鼻くくり): 同社の技術力が地域課題の解決に直結した例として、イノシシやシカを捕獲する罠の開発がある。「鼻くくり」は、罠にかかった獣の鼻先を保定し、安全に処理するための道具であり、バネの強力な弾性と耐久性が活かされている。これは、農業被害に悩む全国の自治体や猟友会から高い評価を得ている。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社鎌田スプリング |
| 代表者 | 代表取締役 鎌田 文生 |
| 所在地 | 〒322-0026 栃木県鹿沼市茂呂812-9 |
| 電話番号 | 0289-72-1885 |
| FAX | 0289-72-1886 |
| 公式URL | https://kamada-spring.com/ |
| 認証 | ISO9001, ISO13485 |
| 事業内容 | 精密ばね、医療用注射針、害獣捕獲資材の製造・販売 |
3. 第2章:輸送用機器・金属加工クラスター ~一貫生産体制による競争力の源泉~
栃木県は、日産自動車(上三川町)、SUBARU(群馬県太田市に隣接)、ホンダ(芳賀・真岡エリア)という完成車メーカーの一大集積地に囲まれている。
この環境下で成長した金属加工企業は、単なる「下請け」から脱却し、設計から組立までをカバーする「提案型サプライヤー」へと進化している。
3.1 オグラ金属株式会社
企業概況:「金属加工のショッピングモール」
足利市のオグラ金属株式会社は、自社の事業モデルを「金属加工のショッピングモール」と定義している。
これは、顧客が求めるあらゆる金属加工ニーズに対し、設計・試作からプレス、溶接、塗装、組立、そして量産出荷までをワンストップで提供できる体制を指す。
創業100年を超える老舗でありながら、常に最新鋭の設備投資を行い、自動車部品(サスペンション、ドアパーツ)、アミューズメント機器(パチンコ・パチスロ筐体)、環境機器、鉄道車両部品など、多種多様な業界に製品を供給している。
足利東部工業団地内に位置する広大な工場群は、地域雇用の最大の受け皿の一つでもある 。
技術的特異性:大型プレスとロボット溶接
- 設備力: 800トンの大型トランスファープレスや順送プレスなど、計119台以上のプレス機を保有し、小型精密部品から大型の車体部品まで対応可能である。
- 溶接技術: ファイバーレーザー溶接ロボットを導入し、従来のスポット溶接やアーク溶接では困難だった歪みの少ない接合や、異種金属の接合、高速溶接を実現している。溶接設備は243台以上を数え、自動化ラインによる大量生産体制が整っている。
- 環境への取り組み: 工場屋根や駐車場に大規模な太陽光発電パネル(約8,000枚、1,950kW)を設置し、自家消費および売電を行っている。これは製造コストの削減だけでなく、CO2排出量削減を求める自動車メーカーのサプライチェーン方針(グリーン調達)にも合致する戦略である。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | オグラ金属株式会社 |
| 代表者 | 代表取締役社長 小倉 勝興 |
| 所在地 | 〒326-0013 栃木県足利市川崎町1310番地 |
| 電話番号 | 0284-91-4111 (代表) |
| FAX | 0284-91-4127 |
| 公式URL | https://www.ogura-gr.co.jp/ |
| 創業 | 1922年 (大正11年) |
| 従業員数 | 290名 |
| 主要取引先 | (株)ヨロズ、マーレジャパン(株)、(株)ユニバーサルエンターテインメント等 |
3.2 株式会社清国 (KIYOKUNI)
企業概況:グローバル拠点の統括
株式会社清国もまた足利市に拠点を置く有力企業であり、金属プレスと精密板金をコア技術としている。
同社の最大の特徴は、日本(足利)をマザー工場としつつ、中国などの海外生産拠点を統括するグローバル経営を行っている点にある。
足利本社では、技術開発、金型設計・製作、試作、そして難易度の高い製品の量産を担当し、海外工場ではコスト競争力が求められる大量生産を行うという「適地生産」を実践している。
主な製品分野は、オフィスオートメーション(OA)機器(コピー機・複合機のフレーム等)や自動車部品であり、高い精度と剛性が求められる大型プレス部品を得意としている 。
技術的特異性:プレスと板金の融合
清国の強みは、金型を用いた大量生産向けの「プレス加工」と、金型レスで多品種少量生産に対応できる「板金加工(NCT、レーザー)」の両方を高いレベルで保有していることである。
- 開発支援(ECH): 設計段階から顧客に入り込み、コストダウンや品質向上のための形状提案を行う「ECH(Early Customer Harmony)」活動を推進している。
- 24時間無人稼働: パンチ・レーザー複合機などの板金設備には自動倉庫(ストッカー)が連結されており、夜間無人運転によるリードタイム短縮を実現している。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社清国 |
| 代表者 | 代表取締役 丸山 徹也 |
| 所在地 | 〒326-0141 栃木県足利市小俣町2690-1 |
| 電話番号 | 0284-62-0513 |
| FAX | 0284-62-3861 |
| 公式URL | http://www.kiyokuni.com/ |
| 設立 | 2004年 (グループ再編による) |
| 従業員数 | 139名 |
3.3 株式会社アイ・ピー・エム (IPM)
企業概況:金型と成形のハイブリッド
足利市の株式会社アイ・ピー・エムは、「総合プラスチック成形金型メーカー」として、金型製作と射出成形の両輪で事業を展開している。
一般的に金型メーカーは金型のみを、成形メーカーは成形のみを行う分業体制が多い中、IPMはこの両方を社内に持つことで、トラブル発生時の迅速な対応や、成形性を考慮した最適な金型設計を実現している。
主な顧客は自動車部品メーカーであり、内装部品や機能部品など、外観品質と寸法精度の両方が求められる製品を供給している 。
技術的特異性:インサート成形と二色成形
- インサート成形: 金属端子やバスバー(配線板)を金型内に配置し、その周りに樹脂を注入して一体化させる技術。自動車の電装化が進む中で、スイッチ類やセンサー部品における需要が急増している。IPMはこの自動化ラインの構築に強みを持つ。
- 二色成形(ダブルモールド): 異なる2種類の樹脂(例:硬質材と軟質材、透明材と有色材)を一度の工程で成形する技術。塗装や組立工程を省略できるため、コストダウンと品質向上に寄与する。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社アイ・ピー・エム |
| 代表者 | 代表取締役社長 武藤 直矢 |
| 本社所在地 | 〒326-0844 栃木県足利市鹿島町370番地1 |
| 電話番号 | 0284-62-5122 |
| FAX | 0284-62-6533 |
| 公式URL | https://www.ipm-pla.co.jp/ |
| 設立 | 1970年 |
| 資本金 | 1,500万円 |
| 主要拠点 | 本社工場(足利)、群馬工場(太田) |
4. 第3章:産業用機械・自動化クラスター ~ニッチトップ技術の宝庫~
栃木県の機械産業は、繊維機械の製造から始まり、現在では航空宇宙、半導体、農業機械といった先端分野へとその裾野を広げている。
ここでは、特定の技術領域において他社の追随を許さない独自技術を持つ企業を紹介する。
4.1 株式会社石井機械製作所
企業概況:明治創業からの進化
足利市の石井機械製作所は、1888年(明治21年)創業という長い歴史を持つ。当初は織物機械(ドビー機)の製造販売を行っていたが、時代の変遷とともに事業構造を柔軟に転換させてきた。
現在は、航空宇宙、自動車、半導体、医療機器などの分野における専用生産設備の設計・製作および精密部品加工を行うエンジニアリング企業である。
「オーケストラファクトリー」というユニークなコンセプトを掲げており、設計、加工、組立、検査といった各工程を楽器のパートになぞらえ、それらが調和して一つの「作品(製品)」を生み出すという思想でモノづくりを行っている 。
技術的特異性:JIS Q 9100と難削材加工
- 航空宇宙産業への参入: 航空宇宙品質マネジメントシステム「JIS Q 9100」の認証を取得しており、極めて高い品質管理能力が証明されている。チタン合金やインコネルといった航空機エンジンや機体に使用される難削材の加工ノウハウを有し、5軸マシニングセンタや大型五面加工機を駆使して複雑形状部品を製造している。
- 設備の一貫製造: 部品加工だけでなく、顧客の工場で使用される自動化ラインや専用機の設計から組立までを一貫して請け負うことができる。これにより、顧客の生産技術部門のアウトソーシング先として機能している。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社石井機械製作所 |
| 代表者 | 代表取締役社長 石井 大洋 |
| 本社所在地 | 〒326-0327 栃木県足利市福富新町726 |
| 電話番号 | 0284-71-4121 |
| 公式URL | http://www.iks-web.co.jp/ |
| 創業 | 1888年 |
| 事業内容 | 航空宇宙・自動車・半導体関連設備の設計製作、精密部品加工 |
4.2 株式会社竹沢精機
企業概況:ホーニング加工のパイオニア
栃木市藤岡町に位置する竹沢精機は、金属の内面研削技術である「ホーニング加工」に特化したメーカーである。
同社の製品は「ワンパスホーニングマシン(ミクロンボーイ)」や「ダイヤモンドリーマ」として知られ、自動車の油圧制御バルブやエンジン部品など、ミクロン単位の真円度・円筒度が求められる重要保安部品の加工に使用されている 。
技術的特異性:フローティングホルダの革新
竹沢精機の技術的優位性は、独自開発の「フローティングホルダ」にある。
- 機構の原理: 通常、ドリルやリーマは機械の主軸に固定されて回転するが、わずかな芯ズレが加工穴の精度悪化(拡大、楕円化)を招く。フローティングホルダは、ツール自体が柔軟に動き、下穴の中心にならう(追従する)機構を持っている。
- 顧客メリット: このホルダを使用することで、高価な専用ホーニング盤を使わずに、一般的なマシニングセンタでも超高精度な内径仕上げが可能となる。これは設備投資を抑えたい部品メーカーにとって大きなメリットであり、コスト競争力の強化に貢献している。
- ダイヤモンドリーマ: 独自の電着技術を用いたダイヤモンドリーマは、超硬工具に比べて圧倒的な長寿命を誇り、工具交換の手間とコストを削減する。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社竹沢精機 |
| 代表者 | 代表取締役 上岡 廣志 |
| 所在地 | 〒323-1104 栃木県栃木市藤岡町藤岡2926-1 |
| 電話番号 | 0282-62-4725 |
| FAX | 0282-62-4719 |
| 公式URL | http://www.takezawa-seiki.co.jp/ |
| 創業 | 1962年 |
| 事業内容 | ホーニングマシン、ダイヤモンドリーマの製造・販売 |
4.3 株式会社スズテック
企業概況:農具鍛冶から開発型企業へ
宇都宮市のスズテックは、1946年に「鈴木農具鍛工所」として創業した農業機械メーカーである。
戦後の食糧増産が叫ばれる中、農具の鍛冶職人としての技術を活かして創業し、現在では「開発型企業」として水稲用播種機(種まき機)のトップブランドの一角を占めている。
同社の製品は、クボタ、ヤンマー、イセキ、三菱といった大手農機メーカーにもOEM供給されており、その技術力と品質は業界内で高く評価されている。
近年では、農業従事者の高齢化や人手不足に対応するため、育苗作業の全自動化システムや、環境負荷を低減する施肥機などの開発に注力している 。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社スズテック |
| 代表者 | 代表取締役 鈴木 直人 |
| 本社所在地 | 〒321-0905 栃木県宇都宮市平出工業団地44-3 |
| 電話番号 | 028-664-1111 |
| FAX | 028-662-5592 |
| 公式URL | https://www.suzutec.co.jp/ |
| 創業 | 1946年 (昭和21年) |
| 資本金 | 1億円 |
| 事業内容 | 農業用機器(播種機、トラクタ用作業機)、環境関連機器の製造 |
5. 第4章:高機能プラスチック・環境クラスター ~素材技術と循環型社会への貢献~
プラスチック加工分野においても、栃木県には高度な技術を持つ企業が存在する。
ここでは、加工難易度の高い「スーパーエンプラ」の成形や、廃棄物を資源に変えるリサイクル技術を持つ企業を取り上げる。
5.1 有限会社若林工業
企業概況:スーパーエンプラ成形のスペシャリスト
下野市の有限会社若林工業は、プラスチック射出成形の中でも、特に難易度の高い「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」の加工を得意とする技術集団である。
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPSU(ポリフェニルサルホン)、PEI(ポリエーテルイミド)といった樹脂は、耐熱性(連続使用温度200℃以上)、耐薬品性、機械的強度に優れ、金属代替材料として航空機や医療機器に使用される。
しかし、成形には300℃~400℃という高温が必要であり、流動性も悪いため、一般的な成形設備や技術では加工が困難である。
若林工業はこれらの樹脂にガラス繊維や炭素繊維(カーボンフィラー)を配合した強化樹脂の精密成形ノウハウを有しており、高強度・軽量化が求められる部品の製造に対応している 。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 有限会社若林工業 |
| 代表者 | 代表取締役 若林 政男 |
| 所在地 | 〒329-0401 栃木県下野市箕輪705-1 |
| 電話番号 | 0285-44-1723 |
| FAX | 0285-44-4714 |
| 公式URL | http://w-kougyo.com/ |
| 設立 | 1970年 |
| 事業内容 | スーパーエンプラ射出成形、インサート成形 |
5.2 株式会社オオハシ
企業概況:廃棄物から製品を生み出す
鹿沼市の株式会社オオハシは、資源循環型社会の構築に貢献するリサイクル企業である。
元々は電線の被覆材(プラスチック)のリサイクル事業からスタートしたが、現在ではその再生原料を活用した自社製品「リピーボード」の製造販売を行っている。
「リピーボード」は、建設現場や農業現場で地面に敷設する養生板であり、軽量で耐久性が高く、かつ使用後は再びリサイクルが可能という完全循環型の製品である。
廃電線処理という静脈産業から、製品製造という動脈産業へと事業を進化させたモデルケースとして注目される 。
企業データ概要
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 株式会社オオハシ |
| 代表者 | 代表取締役社長 大橋 祐二 |
| 鹿沼工場 | 〒322-0026 栃木県鹿沼市茂呂1858-89 |
| 電話番号 | 0289-64-3847 |
| 公式URL | https://oohasi.co.jp/ |
| 事業内容 | 廃電線リサイクル、再生プラスチック製品製造 |
6. 栃木県内 金属・機械・プラスチック加工会社ディレクトリ(地域別・分野別補遺)
上記で詳述した主要企業以外にも、栃木県内には数多くの優れた製造業が存在する。
以下に、調査資料に基づき確認された企業を地域および分野別に整理する 59。
6.1 宇都宮エリア(テクノポリス圏)
宇都宮市は、清原・平出・瑞穂野などの大規模工業団地を擁し、光学、精密機械、輸送用機器の集積が進んでいる。
- 株式会社FTMテクニカルサービス
- 分野:生産用機械器具
- 所在:宇都宮市
- 共立精機株式会社
- 分野:業務用機械器具(ツーリングシステム等)
- 所在:宇都宮市
- 株式会社城北工範製作所
- 分野:金属製品、精密金型
- 所在:宇都宮市
- 株式会社雀宮産業
- 分野:輸送用機械器具
- 所在:宇都宮市
- 株式会社鈴矢電機サービス
- 分野:生産用機械器具
- 所在:宇都宮市
6.2 足利・佐野・栃木エリア(両毛ものづくり圏)
繊維産業からの転換に成功し、自動車部品やプラスチック加工の集積が厚い。
- 株式会社キリウ
- 分野:輸送用機械器具(ブレーキディスク・ドラムの大手)
- 所在:足利市
- 株式会社タツミ
- 分野:輸送用機械器具(自動車用ブレーキ部品、ミッション部品)
- 所在:足利市
- 有限会社島田製作所
- 分野:輸送用機械器具
- 所在:足利市
- 株式会社井上製作所
- 分野:生産用機械器具(撹拌機・分散機の大手)
- 所在:佐野市
- 株式会社竹中
- 分野:輸送用機械機器
- 所在:佐野市
- 株式会社川喜田製作所
- 分野:輸送用機械器具
- 所在:栃木市
- GKNドライブラインジャパン株式会社
- 分野:輸送用機械器具(駆動系部品の外資系大手)
- 所在:栃木市
6.3 鹿沼・日光エリア(環境・木工・医療圏)
木工産業の伝統を持ちつつ、環境技術や電子部品、医療機器へのシフトが見られる。
- 有限会社シマヅ化成
- 分野:プラスチック製品
- 所在:日光市
- 株式会社大日光・エンジニアリング
- 分野:電子部品実装(EMS)
- 所在:日光市
- 株式会社篠原製作所
- 分野:業務用機械器具
- 所在:鹿沼市
- 有限会社竹沢アルミ工業所
- 分野:輸送用機械器具
- 所在:鹿沼市
- 松井電器産業株式会社
- 分野:電子部品・デバイス
- 所在:鹿沼市
6.4 県北・その他エリア(那須・大田原・真岡)
広大な敷地を活かした大規模工場や、精密加工技術を持つ企業が点在する。
- 株式会社マツモトセイコー
- 分野:輸送用機械器具、精密加工
- 所在:大田原市
- 泉鋼管株式会社
- 分野:鉄鋼業(各種鋼管製造)
- 所在:那須塩原市
- 石川技研株式会社
- 分野:電子部品・デバイス
- 所在:真岡市
- 品川ゼネラル株式会社
- 分野:化学工業(真岡工場)
- 所在:真岡市
- 株式会社カナメ
- 分野:金属製品(屋根材、ソーラーパネル架台)
- 所在:宇都宮市(本社)、那須工場
7. 結論:栃木モデルの優位性と将来展望
本調査を通じて浮き彫りになったのは、栃木県のモノづくり企業が持つ**「垂直統合への志向」と「ニッチトップ戦略」**の二つの潮流である。
第一に、ナカニシ、マニー、オグラ金属、清国といった企業は、いずれも設計から製造、組立までを一貫して行う体制を構築している。
これは、製造プロセスのブラックボックス化を防ぎ、品質を極限まで高めるための必然的な選択である。
特に医療機器分野において、この「Made in Tochigi」の信頼性は、世界市場における強力な参入障壁となっている。
第二に、金子メディックス(注射針OEM)、竹沢精機(ホーニング)、若林工業(スーパーエンプラ)のように、特定の加工技術に特化し、その分野で圧倒的な深さを追求する企業群の存在である。
彼らは大量生産の汎用品市場ではなく、技術的難易度の高い高付加価値市場にリソースを集中させることで、高い収益性を確保している。
栃木県の産業集積は、単なる工場の集合体ではない。
北関東自動車道による東西の連携、東北自動車道による首都圏との直結、そして地域の歴史的背景が生んだ「職人気質」と「先端技術」の融合が、独自の産業エコシステムを形成している。
今後、電気自動車(EV)へのシフトや高齢化社会の進展に伴い、同県の「軽量化技術(プラスチック・アルミ)」や「医療・介護機器技術」の重要性はさらに高まることが予測される。
(免責事項: 本報告書は提供された公開情報に基づき作成されています。
各企業の最新の事業内容や連絡先については、必ず各社の公式ホームページ等で直接ご確認ください。)
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